法面工事の3次元測量手段として、最も代表的なのはUAV写真測量でしょう。法面現場は、平面的でなく立体的なため、地上型のレーザースキャナーでは死角が多くなり計測対象をすべてカバーできないことがその理由です。
ドローンでまだ現場の全景や履行報告しか撮影したことがない人にとって、撮影した写真が3次元座標を持った点群データになるのはなかなかイメージしづらいです。何から調べたらよいかもわからない方のために、まずはこれだけということで、UAV写真測量の情報を整理します。
基準点測量
もしかしたら意外かもしれませんが、まずは第一に基準点測量から始めます。
これは、通常の測量手順と同じです。UAVで撮影した写真が3次元座標を持つのは、x,y,zを持った基準点を設置しているからです。のちに対空標識(標定点・検証点)の座標を斜面上に設置するためにも、斜面から見える道路上などにzも持たせた基準点をつくっておきましょう。
現場踏査・オルソ画像用写真の撮影
基準点を設置した時にドローンで対象範囲の全景を撮影したり、ドローンを飛行させる際に障害物がないかをチェックしておきましょう。飛行計画を作成するためのオルソ画像用として、カメラを真下に向けて計測対象となる現場を撮影しておきます。
自動飛行計画(フライトプラン)作成 #飛行ルート
UAVを自動飛行させるルートを組んでいきます。UAV写真測量で精度の良い点群データを作成するためには、定められた写真のオーバーラップ率や斜面からの距離を適切に保って飛行させる必要があります。自動飛行計画の作成に慣れていないからといって、手動での撮影は計測マニュアルに定められたラップ率を満たせなかったり斜面からの距離にばらつきが出たりするので通常行いません。
フライトアプリケーションは、各社が出していますので自社の用途に合ったものを選択します。
オーバーラップ率は、進行方向に80%以上、横方向(進行方法に対して)に60%以上が基本です。
自動飛行計画(フライトプラン)作成 #詳細設定(カメラ角度・オフセット等)
飛行ルートが決まったら、カメラの角度や斜面からの距離(オフセット)を設定します。カメラの角度は、法面が立っているか寝ているかでも変わってくるので、平均的に斜面に垂直に向くような角度を設定します。オフセットはドローンのカメラの性能によって差が出ます。良いカメラほど斜面から離れることができ、性能の低いカメラは30mほどしか離れられないので、撮影の効率が悪かったり、樹木などに干渉しやすかったりします。
対空標識の設置計画
UAV写真測量では、現場に対空標識を設置する必要があります。
これは、写真の位置情報を整合する際に基準点の役割を果たします。対空標識はドローンからの視認性を良くしているだけで、実際に意味のあるのは対空標識の中心の座標値です。
対空標識の設置
配置計画に基づいて、現場に対空標識を設置します。
計測の前後どちらかで中心点の座標(x, y, z)を取得します。通常の基準点と同じように、対空標識の設置の仕方や中心点座標の計測の精度が点群データの精度にも影響します。
UAV写真測量開始
自動飛行計画に基づいて現場でドローンを飛ばして写真を撮影します。
求める精度や現場の条件によっては、現場で実際に飛ばしながら、フライトプランを微調整していくこともあります。
計測精度検証
ここから、データ処理のプロセスです。写真を点群にする前に、まずはデータの精度を検証します。
このとき、計測した精度がICT法面工の適用工種の計測精度を満たしている必要があります。
点群化処理
計測したデータが精度を満たしていることが確認できたら、写真を点群化します。
現場の実測値と点群データの計測値を比較
計測データの精度は検証点との座標値の誤差で検証が済んでいます。
発注者に検証結果を報告しますが、さらに現場で検証点の座標値間をテープ等で計測して現場の実測値と差がないことを検証して発注者に報告または立会を行うとデータの信用度が増します。
点群を使って横断図作成・出来形管理
精度が検証済の点群を使って必要な施工管理を行います。
以上が、UAV写真測量の主なプロセスです。