ごく限られた条件下での法面整形工を除いて、ICT法面工では、ICT土工などのようにICT建設機械で法面工事の施工ができるわけではありません。
では、建設機械による機械施工が行えないICT法面工とはなんなのでしょう。

ICT法面工(広義の意味で法面現場でのICT活用)によって、現場に下記の変化が起こります。

・ 法面工事の安全性が向上する
・ 法面工事の施工管理の精度が向上する
・ 施工管理が省力化できる
・ 女性や若手が測量や出来形管理を行える
・ 災害時や現場に近寄れないケースで迅速に現場状況が把握できる

法面工事において、もっとも向上させなければならないのは、施工性や生産性よりまずは安全性です。
整形したきれいな法面とは違った斜面を相手に施工を行う法面業者は、法面工事の機械化がいかに難しいかを理解しています。そして、自然の斜面に親綱でぶら下がって作業している施工者が最も向上させるべきは安全性です。法面工事では、安全性を向上させることで生産性の向上を実現できます。

法面工事では、削孔したり吹付したりする技術者のほかに施工管理者も法面上で管理者業を行います。ICT法面工では、施工を行う職人や技術者の施工性は直接的には向上させられません。その分、測量や出来形管理など、施工管理のために法面に昇降する回数は従来の半分以下になります。そして、施工管理のために作業者の手を借りたり、施工を止める必要がないため、結果的に施工の進捗も効率化させることができます。

従来では、法枠の吹付中や完了後に管理者がのり面を登って桁中心間隔をメジャーで計測していました。
1箇所/100mという管理基準なので計測する手間も掛かり場合によっては、管理作業の手元として施工の手を止めることもあります。

法枠桁中心間隔実測

ICT法面工では、昼休みの作業が止まっている間などにUAVで計測しておけば、あとは点群上で出来形計測が安全に行えます。

法枠桁中心間隔点群

そして、ICT法面工のもう一つのメリットは、現場管理の最前線で若手や女性技術者が活躍できることです。従来は形骸化していたような女性技術者の現場は配置が、いまでは男性と女性が現場代理人や技術者をペア担当した場合、女性が実際に測量や出来形管理を担うことができるようになりました。

近年の豪雨災害や盛土の崩壊など、土砂災害はいつ発生するかわかりません。そして、発生した後の2次災害にも気を付けなければなりません。そんな状況で被災地の現況を迅速に把握して3次元点群データによって現場を可視化することでいち早く対策業務や設計業務に取り掛かることができます。

法面工事の現場にとって、機械で施工ができることより大きなインパクトをICTは与えています。